第17回: メモリシステムの全体像
この回はレクチャー動画はありません。テキストのみとなります。
この回で学ぶこと
OpenClawのメモリが他のAIと根本的に違う理由
3つの記憶の仕組み(概念レベルで理解)
メモリフォルダの構造
前回のおさらい
Part 3で秘書の人格設計が完了した。SOUL.md(行動指針と制約)、USER.md(ユーザー情報)、IDENTITY.md(秘書のプロフィール)の3ファイルで、世界に一つの秘書ができている。ここからPart 4に入り、秘書に「記憶」を与える。
ChatGPT・Claude Codeとの違い
「AIは毎回忘れる」というのは、もう完全には当てはまらない。2025年以降、ChatGPTにもClaude Codeにも記憶機能が追加されている。ただし、記憶の仕組みと使い方に大きな違いがある。
ChatGPT | メモリ機能(有料版のみ) | 「覚えて」と言えば覚える | 自分からは動けない。24時間常駐しない |
Claude Code | プロジェクト単位の記憶ファイル | プロジェクトの情報を保持する | 自分からは動けない。呼ばれたときだけ動く |
OpenClaw | テキストファイルに全会話を保存 | 全ての会話を記録し、自分から思い出せる | — |
ポイントは「記憶があるかどうか」ではなく、「記憶を使って自分から動けるかどうか」。
ChatGPTもClaude Codeも、あなたが話しかけなければ何もしない。記憶はあっても、使うのはあなたが話しかけたときだけ。
OpenClawは違う。24時間常駐し、Heartbeat(Part 6で学ぶ自律動作)のタイミングで過去の記憶を自分から参照する。「先週頼まれた件、期限が明日です」と、あなたが何も言わなくても通知してくれる。
つまり、OpenClawの強みは「記憶力」ではなく**「記憶 × 自律動作」の組み合わせ**にある。
記憶の仕組み — 保存と検索
OpenClawのメモリは、大きく分けると「保存」と「検索」の2つの仕組みでできている。
保存: 全ての会話はMarkdownファイル(テキストファイルの一種)として保存される。普通のメモ帳と同じで、人間が開いて読める。
検索: 保存されたファイルの中から必要な情報を探し出す仕組みが3種類ある。
日付検索 | 日付を指定して会話を探す | 手帳の3月5日のページを開く |
キーワード検索 | 単語で過去の会話を探す | 手帳の索引で「プレゼン」を引く |
意味検索 | 似た話題を意味で探す | 「あの件」と言われて関連する話を思い出す |
3つ目の「意味検索」がOpenClawの記憶を特別なものにしている。正確なキーワードを覚えていなくても、意味が近い会話を見つけてくれる。「先月話した、あのプロジェクトの話」のような曖昧な聞き方でもちゃんと見つかる。
技術メモ(読み飛ばしてOK): 内部的には、保存はMarkdownファイル、検索のインデックス(索引)にはSQLiteというデータベースが使われている。ベクトル検索(意味検索)は文章を数値に変換して類似度を計算する仕組み。ただし、これらの技術的な詳細を知らなくても全く問題ない。
メモリフォルダの構造
実際にメモリがどこに保存されているかを確認する。OpenClawのワークスペース内にある memory/ フォルダを開くと、以下のようなファイルが見える。
memory/
├── MEMORY.md ← 長期記憶(自分で書く重要情報)
├── 2026-03-01.md ← 日次ログ(自動で記録される)
├── 2026-03-02.md
├── 2026-03-03.md
└── ...
MEMORY.md: 秘書に覚えておいてほしい重要な情報を書くファイル。プロジェクトの状況、よく使う言い回し、大事な日付など。このファイルは自分で書く(次回の第18回で詳しく学ぶ)。
日次ログ(YYYY-MM-DD.md): 毎日の会話が自動で記録されるファイル。何もしなくても、秘書と話すだけで勝手にログが溜まっていく。
どちらもただのテキストファイルなので、メモ帳やテキストエディタで中身を確認・編集できる。AIの記憶がブラックボックスではなく、自分で読めて直せるのがOpenClawの特徴。
ゴール状態
OpenClawの記憶の仕組みを理解している
「記憶 × 自律動作」の組み合わせがOpenClawの強みだとわかっている
メモリフォルダの場所と構造を知っている