第26回: マルチチャネル運用 — 複数のチャネルを同時に使う
この回はレクチャー動画はありません。テキストのみとなります。
この回で学ぶこと
複数チャネルを同時に動かす設定方法
チャネル間で「共有されるもの」と「共有されないもの」
チャネルごとの使い分け戦略
Part 5の総復習
前回のおさらい
前回、Discord・LINE・Slackそれぞれの接続手順を概要レベルで確認した。今回は複数のチャネルを同時に動かす方法と、チャネルごとの使い分けを学ぶ。
複数チャネルの同時運用設定
OpenClawで複数のチャネルを同時に使う設定はシンプル。各チャネルの設定を openclaw.json に並べて書くだけ。
{
"channels": {
"telegram": {
"enabled": true,
"botToken": "Telegramのトークン",
"dmPolicy": "pairing"
},
"discord": {
"enabled": true,
"token": "DiscordのBotトークン",
"dmPolicy": "pairing"
},
"slack": {
"enabled": true,
"appToken": "xapp-で始まるSlackのApp-Levelトークン",
"botToken": "xoxb-で始まるSlackのBotトークン"
}
}
}
注意点:
各チャネルに
"enabled": trueを書くこと。トークンだけ書いても有効化しないと秘書はそのチャネルに接続しないSlackだけトークンが2つ必要(
appTokenとbotToken)。TelegramとDiscordは1つずつ
ゲートウェイを再起動すると、接続状態を確認できる:
openclaw channels status
各チャネルが「connected」と表示されれば成功。もし特定のチャネルだけ接続できない場合は、そのチャネルのトークンを再確認する。
チャネル間で共有されるもの・されないもの
ここが非常に重要なポイント。複数チャネルを使うときに、多くの人が誤解しやすい部分。
共有されるもの(チャネルをまたいでも同じ):
MEMORY.md(長期記憶) — どのチャネルから話しかけても、秘書は同じMEMORY.mdを参照する。Telegramで「覚えて」と伝えた内容は、Slackからでも思い出せる
SOUL.md(人格設定) — 秘書の性格や口調はチャネルに関係なく一貫している
日次ログ — すべてのチャネルでの会話が同じ日次ログに記録される
ワークスペースのファイル — 秘書が作成・編集したファイルはチャネルを問わず共有
共有されないもの(チャネルごとに別々):
会話の流れ(セッション) — これが最も大事な違い。TelegramとSlackでは別々の会話として扱われる
具体例で説明する:
朝、Telegramで「今日の予定を教えて」と聞く → 秘書が予定を5つ答える
昼、Slackで「さっき聞いた予定の1件目について詳しく」と聞く → 秘書は「さっきの会話」を知らない。Slackでは別の会話が始まっているため
ただし、朝のTelegramの会話で「今日の打ち合わせは14時に変更になった。覚えて」と伝えてMEMORY.mdに記録されていれば、Slackで「今日の打ち合わせは何時?」と聞いたときに「14時です」と答えられる。
つまり、「会話の記憶」は別々だが、「手帳に書いた記憶」は共通。
人間の秘書に例えるなら:電話(Telegram)で話した内容を、あとでメール(Slack)で聞き直しても「電話で何を話したか」は覚えていない。ただし、秘書が電話の後にメモ帳に書き残した情報は、メールで聞いても教えてくれる。
実用的なコツ: チャネルをまたいで引き継ぎたい情報があれば、「これをMEMORY.mdに書いておいて」と一言添えるだけでOK。そうすれば別のチャネルからでもその情報にアクセスできる。
ただし注意点が2つ:
MEMORY.mdが読み込まれるのはプライベート(DM)のみ。DiscordサーバーのチャネルやSlackのパブリックチャネルなど、グループでの会話ではMEMORY.mdは読み込まれない。これはセキュリティ上の設計で、個人の記憶がグループに漏れないようにするため
「覚えて」と言っても書かれないことがある。秘書が「わかりました」と言っても、実際にMEMORY.mdへの書き込みが完了していない場合がゼロではない。確実に残したい情報は、自分でMEMORY.mdを開いて直接書くか、書き込み後に「MEMORY.mdに書いた?」と確認するのが安心
チャネルごとに別の秘書を割り当てることもできる
デフォルトでは、すべてのチャネルで同じ1人の秘書が対応する。しかし、「Telegramはプライベート用の秘書、Slackは仕事用の秘書」のように、チャネルごとに別の秘書を割り当てることもできる。
これは第38回で学ぶ「マルチエージェント」の仕組みを使う。今の段階では「そういうこともできる」と知っておくだけでOK。
チャネルごとの使い分け戦略
複数チャネルを運用する際は、用途ごとに使い分けるのが効果的。
個人のメイン連絡 → Telegram。無制限・無料・スマホから手軽
チーム作業 → Discord。サーバー内で複数メンバーに秘書を共有できる(ペアリングで許可した人だけ)
仕事用 → Slack。会社のワークスペース内で完結。Socket Modeで公開URL不要
日本の知人向け → LINE。相手がTelegramを使っていない場合の代替手段(コスト・HTTPS設定に注意)
例えば、普段はTelegramで個人的な指示を出しつつ、仕事のSlackワークスペースでも同じ秘書を使う、といった運用が可能。秘書の長期記憶(MEMORY.md)はDMであれば共有されるので、「プライベートで決めたこと」も仕事側のDMで参照できる。
逆に、仕事の情報をプライベートに漏らしたくない場合は、チャネルごとに別の秘書(別のエージェント)を割り当てる方法がある。
Part 5全体の振り返り
Part 5で行ったこと:
第21回:チャネル比較 — 主要5チャネルの特徴を比較し、まずTelegramに決定
第22回:Bot作成 — BotFatherでTelegram Botを作成し、トークンを取得した
第23回:接続 —
openclaw.jsonにトークンを設定し、ゲートウェイ起動。ペアリングで自分だけのBotとして承認した第24回:応用 — 画像・音声・PDF送信、ボタンUIなどテキスト以外のやりとりを学んだ
第25回:展開 — Discord(ネイティブ)・Slack(ネイティブ、Socket Mode)・LINE(プラグイン、HTTPS必須)の概要
第26回:マルチチャネル — 複数チャネルの同時運用。メモリは共有されるが会話セッションは別々
ここまでで、秘書に「人格」「記憶」「連絡手段」の3つを揃えた。
ただし、今の秘書にはまだ一つ大きな制限がある。こちらから話しかけない限り、秘書は何もしないということ。
次のPart 6では、その制限を外す。秘書に「やることリスト」を渡して、自分からタスクを実行し、結果をチャネル経由で報告してくれるようにする。「受け身の秘書」が「自分で動く秘書」になる — ここが講座のクライマックス。
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